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投稿日:2025年04月12日
『恐竜はすごい、鳥はもっとすごい!~低酸素が実現させた驚異の運動能力~』を読んで
先日、光文社新書『恐竜はすごい、鳥はもっとすごい!~低酸素が実現させた驚異の運動能力~』を読んで、目を見張りました。もともと、空を自由に飛ぶ鳥を見ていて「ただ羽を得て一生懸命に羽ばたくだけでは、なかなか飛べるものではないはず。いったい何が違うのだろうか」と思っていたのですが、本書を通じてその疑問が解消しました。なお、この著書は、著者が2021年8月に学術誌Trends in Endocrinology and Metabolism(32巻10号)に発表した論文「Bird evolution by insulin resistance」に基づいているとのことで、学問的な裏付けも興味深いところでした。
地球上の生物はこれまでに五回の大量絶滅を経験しており、白亜紀末期の隕石衝突による五回目の絶滅は広く知られています。しかし、本書によると三回目の大量絶滅とされるペルム紀末~三畳紀初期境界(P-T境界)の事象は、極端な酸素濃度の低下(約30%から10%へ)と二酸化炭素の急上昇という過酷な環境変化が原因で、海洋生物の約90%、陸上生物の約70%が絶滅したため「大絶滅(The Great Dying)」とも呼ばれているそうです。地球史上でも最大規模だったとされ、この一大事が後の生物進化に大きな影響を与えました。
特に印象的だったのは、獣脚類の恐竜(ティラノサウルスが代表的)が低酸素環境に適応する過程でミトコンドリアを強化し、“スーパーミトコンドリア”を獲得したという点です。ミトコンドリアは細胞内で栄養素からエネルギーを作り出す小器官であり、その生成物であるATP(アデノシン三リン酸)は生物活動に欠かせない“エネルギー通貨”ともいわれます。なお「スーパーミトコンドリア」という呼び方は、本書の著者が提唱している造語だそうです。また、インスリン感受性が低下することで必要なときにエネルギーを素早く取り込む仕組みを身につけ、最終的には羽毛を持つ恐竜が誕生し、鳥へと進化していったといいます。単に「羽を獲得すれば飛べる」という話ではなく、呼吸や代謝機構そのものが根本的に変化しているからこそ、鳥は空を自在に舞うことができるのだとわかりました。
本書を読んで、恐竜と鳥の関係がこれほど壮大で、さらに生化学的にも奥深いドラマが隠されていたことを知り、強く心を動かされました。飛翔の仕組みを表面的に見るのではなく、細胞レベルや代謝の視点から紐解いていく面白さを改めて感じた次第です。限られた字数では説明しきれないので、興味をもたれたかた、疑問をもたれたかたは紹介した著書、論文を一読してください。
中島 昭勝
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