TOPページ Doctorニュース 第70回日本透析医学会学術集会(2025年6月27-29日、大阪)に参加、発表しました
投稿日:2025年07月10日
第70回日本透析医学会学術集会(2025年6月27-29日、大阪)に参加、発表しました

日々の診療で、思いがけない画像所見に出会うことがあります。2025年6月、第70回日本透析医学会学術集会で私が発表したのは、透析患者さんに偶然見つかったChilaiditi(キライディティ)症候群に関する症例でした。
Chilaiditi徴候とは、腸(主に結腸)が肝臓と横隔膜の間に入り込むことで、胸部X線やCT画像上にガスを含んだ影として見える状態を指します。多くは無症状ですが、腹部膨満感、悪心、嘔吐、呼吸苦などを伴う場合にはChilaiditi症候群と診断されます[1]。
この所見は、一般人口では0.025〜0.28%と非常に稀ですが、高齢者では1%近くまで達するとの報告もあります。さらに、男性に多く、男女比は約4:1とされています[2]。
Chilaiditi症候群の発症には、以下のような解剖学的・病態的要因が関係しています。
– 肝臓の萎縮や肝硬変によって横隔膜との間の空間が拡大する[1,3]
– 靱帯の緩みや位置異常などの構造的要因[1]
– 肥満と急激な体重減少による腹腔構造の変化[3,4]
– 慢性便秘や慢性閉塞性肺疾患(COPD)による腹圧の変動[1]
実際の症例でも、肥満歴のある患者さんが体重減少後に肝容積の縮小を示し、軽度の線維化マーカー上昇とあわせて代謝性肝障害の関与が示唆されました。
Chilaiditi症候群は、まず胸部レントゲンで右横隔膜の挙上と、その下にガス像が認められることで疑われます。腹部CTにより、肝臓と横隔膜の間に結腸が明確に確認できれば、確定診断に至ります[1,3]。
重要なのは、消化管穿孔や腸閉塞といった緊急性のある疾患との鑑別を正確に行うことです。他の疾患との鑑別には、CTが有用です。
Chilaiditi症候群の多くは保存的治療(安静、食事調整、緩下剤など)で改善します[3,4]。ただし、腸閉塞や軸捻転などの合併症が起こった場合には、外科的治療が必要になることがあります[5]。
透析患者さんでは定期的に胸部X線検査が行われるため、Chilaiditi徴候のような偶発所見が見つかる機会が多くなります。今回の症例でも、定期検査での気づきが、背景にある肝線維化や構造異常の評価につながりました。
Chilaiditi症候群は稀な疾患ではありますが、画像所見から身体の内部構造の変化を読み解く手がかりになります。今後も、見慣れた画像の中に潜む「重要なサイン」を見逃さず、患者さんの全体像に目を向ける診療を続けていきたいと思います。
1.Kumar A, Mehta D. Chilaiditi syndrome. In: StatPearls. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2025. PMID: 32119452
2.Sohal RJ, Adams SH, Phogat V, et al. Chilaiditi’s sign: An Incidental Radiographic Finding With Potential Clinical Implications. Cureus. 2019 Nov;11(11):e6230. PMID: 31890429
3.Saber AA, Boros MJ. Chilaiditi’s syndrome: what should every surgeon know? Am Surg. 2005 Mar;71(3):261-263. PMID: 15869145
4.Weng WH, Liu DR, Feng CC, Que RS. Chilaiditi syndrome: case report and literature review. Oncol Lett. 2014 May;7(5):1657-1660. PMID: 24765195
5.Kao CT, Dunkley M, Hodgson R. Surgical management of large bowel obstruction and significant hepatic displacement caused by Chilaiditi syndrome. BMJ Case Rep. 2023;16(11):e255047. PMID: 38035675
中島 昭勝
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