TOPページ Doctorニュース 関節リウマチと腎機能低下の両立治療に光明:生物学的製剤は透析患者でも有効か?
投稿日:2025年06月04日
関節リウマチと腎機能低下の両立治療に光明:生物学的製剤は透析患者でも有効か?
関節リウマチ(RA)は、関節の炎症と痛みを引き起こす疾患として知られていますが、実は慢性腎臓病(CKD)の合併率が高いことが、以前から指摘されています。腎機能の低下は、関節痛の治療で使われる非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やメトトレキサート(MTX)といった薬剤の使用に制限を与えることになり、治療の選択肢が限られてしまうのが現状です。
しかし、治療が不十分であるとリウマチの活動性が高くなり、それがさらに腎機能を悪化させるという、まさに「負のスパイラル」に陥る危険性もあります。
こうしたなか、2024年にAnnals of the Rheumatic Diseases誌に発表された吉村祐介先生らの研究(Yoshimura Y, et al. Ann Rheum Dis. 2024;D:1-10. doi:10.1136/ard-2024-225914)は、RAとCKDを併せ持つ患者さんにとって非常に希望の持てる内容となっています。この研究は、425人のRA患者さんを対象に、生物学的製剤(bDMARDs)を初めて使用したときの「薬剤継続率(36か月)」を分析し、その有効性と安全性を評価したものです。
その結果、腎機能の悪化が進んでも、生物学的製剤の継続率は大きく低下することはなく、特にインターロイキン6阻害薬(IL-6阻害薬)では継続率が非常に高く、透析中の患者さんでも十分な治療効果が得られることが示されました。逆に、TNF-α阻害薬では腎機能が大きく低下したグループでやや継続率が下がる傾向も確認されています。
実際に、IL-6阻害薬はメトトレキサートの併用がなくても単独で効果が持続しやすいという特徴があり、腎機能の悪い方でも使いやすい薬剤として注目されています。また、プレドニゾロン(PSL)の使用量も減らすことができ、感染症のリスクを抑える意味でも非常に有用です。
この報告は、私自身が以前勤務していた石川県立中央病院での臨床現場でも感じていた実感と一致します。実際に、RAとCKDを併せ持つ患者さんに対し、どの薬剤を選ぶか、どのように感染症や副作用を避けながら長期的な関節炎のコントロールを図るかは常に悩ましい課題でした。
今回の研究は、その答えの一つを提示してくれたように思います。特に、透析中のRA患者さんにとって「使える薬がない」という状況から一歩踏み出す希望を与えてくれる結果でした。
今後も、免疫学と臨床の橋渡しとなるような研究成果が日常診療に取り入れられるよう努めていきたいと思います。
中島 昭勝
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