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投稿日:2025年12月15日


透析患者さんに発症した関節炎― 偽痛風と痛風の2つのケースから

 

2025年10月11日・12日に奈良で開催された西部腎臓学会において、私は「透析患者に発症した急性単関節炎の2例 ― 偽痛風および痛風との鑑別診断の重要性 ―」というテーマで発表を行いました。本稿は、その発表内容をもとに、一般の方にもわかりやすい形でまとめたものです。

透析を受けておられる方の中には、「関節が痛い」「腫れて熱をもっている」といった症状を訴える方が少なくありません。一見すると感染症のように見えることがありますが、実は関節の中にたまった「結晶」が原因で炎症を起こす場合もあります。このような「結晶性関節炎」には、痛風と偽痛風の2つの代表的なタイプがあります。今回は、透析患者さんに発症した2つのケースを通じて、その特徴と診断の大切さをお伝えします。

関節炎の原因は「結晶」だった

ある患者さんは、透析を始めてしばらくしてから、突然股関節の強い痛みと発熱が出現しました。最初は感染による関節炎が疑われましたが、関節の中の液体を調べたところ、細菌は検出されませんでした。その代わりに、顕微鏡で光る小さな結晶が見つかりました。この結晶が関節内で炎症を起こすのが「偽痛風」です。偽痛風は慢性腎臓病の方に起こりやすく、膝に生じることが多いのですが、股関節に起こることもあります。感染とよく似た症状を示すため、関節の中の液体を採取して調べることが診断の決め手になります。

透析中に起きた「痛風発作」

別の患者さんでは、透析中に膝の腫れと痛みが突然出現しました。こちらも感染を疑って調べたところ、関節液の中に針のように細長い結晶が見つかりました。これは「尿酸の結晶」で、痛風発作の典型的な所見です。透析を受けていると尿酸は体外に除去されるため、痛風は起きにくいと思われがちです。しかし、透析導入の初期や体のバランスが変わる時期には、尿酸が一時的に増加して痛風発作を起こすことがあります。透析中でも油断はできません。

感染性関節炎との区別が大切

透析患者さんの関節炎で最も注意すべきなのは、感染性関節炎との区別です。感染性関節炎とは、細菌が関節内に侵入して炎症を起こす病気で、放置すると関節破壊や敗血症を引き起こすことがあります。透析患者さんでは、免疫力の低下やカテーテル・シャント感染をきっかけに発症しやすく、一般の人よりも発症率が高いと報告されています。実際、海外の調査では、透析患者の感染性関節炎は一般人口の約50倍にも上るとされています。最も多い部位は股関節や膝関節で、原因菌の多くはグラム陽性球菌、特にMRSAです。そのため、透析患者さんが発熱と関節痛を訴える場合は、まず感染を除外することが重要です。そして、細菌が検出されなかった場合には、偽痛風や痛風といった結晶性関節炎を考える必要があります。

痛風の発症率は国によって異なる

透析患者さんにおける痛風の発症率には、国によって大きな違いがあります。日本の研究では、透析を始めた後は痛風の発症率が著しく低下し、数年後にはおよそ1%前後にとどまると報告されています。一方、アメリカやフランスでは13%前後と高い値が報告されています。この違いは、人種や食習慣、透析方法などの違いが影響していると考えられます。日本の臨床現場では、透析導入後に痛風発作を新たに起こす患者さんは比較的まれで、多くの医師の実感としても、日本の報告値の方が現実に近いようです。

まとめ ― 早期診断が回復の鍵に

透析患者さんの関節炎は、原因が複雑で、感染か結晶かの見極めがとても重要です。関節の腫れや熱っぽさがあるときは、自己判断せずに医療機関を受診し、関節液を調べてもらうことが大切です。偽痛風や痛風は、正確に診断できれば短期間で改善します。一方、感染性関節炎は早期に治療を始めることで重症化を防ぐことができます。透析患者さんは体調の変化を感じ取りにくいことが多いため、「いつもと違う痛み」や「微熱」を軽く見ないことが重要です。

 

これからも、透析を受けておられる方が安心して生活できるよう、小さな症状の変化を大切にし、早期発見・早期治療を
目指していきたいと思います。

 

中島 昭勝

 

 







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