TOPページ Doctorニュース 関節リウマチと腎機能(簡易版)
投稿日:2025年03月07日
関節リウマチ(RA)は慢性の自己免疫疾患で、関節炎を引き起こすだけでなく、全身の臓器に影響を及ぼします。その中でも腎機能の低下は、RA患者の治療における大きな課題です。本ブログでは、RA患者の腎機能評価に関する最新の研究を紹介します。
RA患者の8〜25%では腎機能低下が認められており、特に慢性腎臓病(CKD)のリスクが高いことが知られています。その原因として、慢性炎症や薬剤の副作用、また原発性糸球体疾患などが挙げられます。RA患者では、炎症マーカー(CRP)が高いほどCKDの発症リスクが高まることが確認されています。
腎機能評価には通常、血清クレアチニンを基に算出されるeGFR(eGFR-Cr)が用いられます。しかし、RA患者では筋肉量の低下により、eGFR-Crが実際の腎機能を過大評価することがあります。そのため、筋肉量に影響を受けにくい血清シスタチンCを基にしたeGFR(eG FR-CysC)が、より正確な指標として注目されています。
2021年に発表された我々の研究では、RA患者においてeGFR-CrとeGFR-CysCの差異を引き起こす因子が調査されました。その結果、以下の因子が特に関連していることがわかりました。
●低BMI(体格指数)
●貧血
●低CK(クレアチンキナーゼ)
●糖尿病
●Steinbrocker分類ステージIV
これらの因子を持つ患者では、eGFR-Crが腎機能を過大評価する可能性が示唆されています。これらの研究結果は、2019年のヨーロッパリウマチ学会で発表され、その後、Scientific Reports(https://doi.org/10.1038/s41598-021-89303-3)に掲載されました。
このような患者では、クレアチニンを使用したeGFR-Crではなく、シスタチンCを使用したeGFR-CysCで腎機能を評価することが推奨されます。採血項目に追加するだけで済むため、適切な評価を行った上で治療方針を決定することが重要です。
腎機能が低下したRA患者では、特定の治療薬(例:メトトレキサート、バリシチニブ)の使用に注意が必要です。特に、eGFRが30 mL/min/1.73m2未満の場合、これらの薬剤の使用が禁忌とされています。そのため、腎機能の正確な評価が、適切な治療選択に不可欠です。
RA患者における腎機能評価は、eGFR-Crに頼るだけでは不十分です。特にリスクの高い患者では、eGFR-CysCを用いることで、治療の安全性と効果を向上させることが期待されます。
関節リウマチ(RA)は、単なる関節の疾患ではなく、全身の健康に影響を及ぼす複雑な病気です。その中で腎機能の評価と管理は、患者さんのQOL(生活の質)を守るうえで非常に重要です。今回ご紹介した研究結果や実践的な方法は、患者さん一人ひとりに最適な治療方針を導き出すための重要な指針となります。
今後も、腎機能の適切な評価を通じて治療の安全性を確保し、RA患者さんがより良い生活を送れるよう努めていきます。本ブログが、関節リウマチと腎機能の関係について理解を深める一助となれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。皆さまの健康を心よりお祈り申し上げます。
(詳細について知りたい方は、上記の論文、このブログの詳細版を参考にしてください。)
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