TOPページ Doctorニュース 抗生物質と遺伝子が交差する場所で──ミノマイシンと免疫の意外な関係(簡易版)
投稿日:2025年05月31日
抗生物質と遺伝子が交差する場所で──ミノマイシンと免疫の意外な関係
ミノマイシンという薬をご存じでしょうか? 正式名称はミノサイクリンといい、昔からニキビや風邪の菌などに対して使われてきた抗生物質です。実はこの薬、皮膚の病気である掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)にも使われることがあります。私が石川県立中央病院で働いていたときに、このミノマイシンを長く飲んでいた2名の患者さんが、ある珍しい病気を発症しました。それは体の免疫が自分の血管を攻撃してしまう「自己免疫性の血管炎」でした。
この患者さんたちはミノマイシンを2年間飲み続けた後、発熱と皮膚に赤く網目状の模様(リベドー)が現れました。検査では、血液中にMPO-ANCAという自己抗体が見つかり、皮膚の組織でも血管に炎症が起きていることがわかりました。ミノマイシンの中止とステロイド治療により、いずれの患者さんも速やかに症状は改善しました。私たちはこの2つの症例を、当時研修医だった川原先生とともにまとめ、医学雑誌『Modern Rheumatology Case Reports』に報告しました。
さらに詳しく調べてみると、この2人の患者さんはいずれも「HLA-DRB1*09:01(エイチエルエー・ディーアールビーイチ・ゼロキュウゼロイチ)」という特別な遺伝子を持っていました。この遺伝子は、体の免疫の働きを調節する「HLAクラスⅡ」と呼ばれる遺伝子のひとつで、体の中で「これは敵か味方か」を見分けるような働きをしています。
このHLA-DRB1*09:01という型は、日本人の約6人に1人が持っているとされ、韓国や中国などの東アジアでもよく見られます。一方で、ヨーロッパの人たちにはあまり見られません。この遺伝子は、昔からアジアで多かった感染症、特に結核に対して強く免疫が働くとされており、そのおかげで多くの人が生き延びてきたと考えられています。
けれども、そうした“強い免疫力”が、今の時代には薬に対して過剰に反応し、自分の体を傷つけてしまうことがあります。今回のように、ミノマイシンのような薬を「敵」と誤認して、自分の血管を攻撃する反応を起こしてしまうのです。つまり、“感染症に強い”という進化のメリットが、“副作用を起こしやすい体質”という形で現れてしまった可能性があるのです。
このように、薬の効き方や副作用の出方には、人それぞれの「遺伝子」が深く関わっていることがあります。今後は、遺伝子の情報をもとに、その人に合った薬を選ぶ“個別化医療”がもっと広がっていくと期待されています。私たちが経験し、報告した2例が、その小さな一歩として、これからの安全で安心な医療につながっていくことを願っています。
中島 昭勝

あさなぎ病院は、スタッフ一人一人が活かされ、やりがいを感じながら、
自己成長できるように支援しています。
◯ 木曜日(午後)14:30~18:00 ◎ 土曜日(午前)9:00〜12:30
※受付:診療時間終了15分前までにお願いします。
※休診日:土曜午後、日曜日、祝日
住所:〒933-0906 富山県高岡市五福町1-8
電話:0766-22-5445 外来担当医表
内科、リウマチ科、消化器内科、整形外科、循環器内科
総合診療科、人工透析内科、腎臓内科、リハビリテーション科
内科、リウマチ科、消化器内科、整形外科、循環器内科
総合診療科、人工透析内科、腎臓内科、リハビリテーション科