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投稿日:2025年06月26日


NEJM論文『BAFF過剰発現と自己免疫疾患リスク』

 

2024年のノーベル生理学・医学賞は、「microRNA(miRNA)の発見とその生物学的意義の解明」に授与されました。miRNAは、遺伝子の働きを翻訳後に調整する重要な分子であり、がん、神経疾患、そして自己免疫疾患の病態に深く関わることが証明されつつあります。

この文脈の中で、NEJMに掲載されたSteri Mらの研究(2017)【Steri M, Orrù V, Idda ML et al. Overexpression of the Cytokine BAFF and Autoimmunity Risk. N Engl J Med. 2017;376:1615-1626.】は、miRNAの働きが特定の遺伝子変異によって破綻し、自己免疫疾患のリスクが増すことを分子レベルで証明した極めて重要な論文です。

この研究の主役は、B細胞活性化因子(BAFF)をコードするTNFSF13B遺伝子と、そこに見つかった新しい挿入欠失型変異「BAFF-var(GCTGT → A)」です。この変異は、イタリア・サルデーニャ島の住民を対象としたGWASにおいて、MS(多発性硬化症)との関連が強く示され、その後、全ゲノム解析と連鎖不平衡解析により特定されました。

BAFF-varは3′非翻訳領域に存在し、新たなポリアデニル化シグナル(AATAAA)を形成することで、TNFSF13B mRNAの転写終結位置を変化させ、3′UTRが短縮されます。通常、長い3′UTRにはmiR-15aなどのmiRNAが結合し、BAFFの翻訳を抑制しています。しかしBAFF-varによりこの結合部位が消失すると、翻訳抑制が効かず、BAFFが過剰に産生されてしまいます。

この分子機構は、THP1細胞および初代単球でのmiR-15a導入・抑制実験、ならびにルシフェラーゼレポーターアッセイにより機能的に裏付けられました。実験では、miR-15aにより野生型3′UTRでBAFFの翻訳が抑制される一方、BAFF-var型ではその抑制がほぼ失われていました。

その結果、BAFF-varを有する個体では、血中BAFF濃度が高く、B細胞の数やIgG、IgA、IgMの抗体産生量が増加していました。逆に単球数は減少し、免疫系の恒常性に明らかな破綻が見られました。

図では、DNAレベルでの変異から、mRNAの構造変化、miRNAの抑制解除、タンパク質の過剰発現、免疫細胞のバランス異常、そして自己免疫疾患の発症に至るまでの流れが視覚的に表現されており、本研究の全体像を直感的に理解することができます。

この研究は、非コーディング領域に存在するごく小さな変異が、miRNAによる翻訳制御を破綻させ、疾患リスクを高めることを示した画期的な例です。今後、BAFF-varの有無を治療方針に組み込む個別化医療の進展に向けて、重要なマーカーとなることが期待されます。

本研究は、miRNAの制御破綻というノーベル賞受賞テーマと深く響き合う内容であり、分子生物学、免疫学、進化医学の知見を統合した、時代を先取りする知的成果であるといえるでしょう。

 

中島 昭勝

 







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